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クランクのバランス率 再考 (Ⅳ)


ガスの爆発力を回転運動に替えるクランク機構において、

クランク側を 回転部分、ピストン側を 往復部分と分けた時に、
回転部分の遠心力と往復部分の慣性力の合力が振動となって表れます。

クランク側にあえて「アンバランス」をつけると、ピストン側の慣性力と一部釣り合い振動の大きさと方向が変わります。
単気筒や二気筒オートバイでは、アンバランス重量の大きさでフィーリングが大きく変わります。


バランス率とは、

このアンバランス量がどれくらいになっているのか、またどれくらいつけるかを判断する数値がバランス率です。
ピストン側の往復重量に対してクランク側の回転アンバランス重量がどれ位かの割合です。

このアンバランス重量を変えると何が変わるのか? 
変える前と比較できるように数値化したのがバランス率です。



下の絵はバランス率を図式化したもの。
分子は:クランクの回転アンバランス重量(バランスウエイト重量+コンロッド小端重量)
分母は:往復重量(ピストン周り重量+コンロッド小端重量)
IMG_0013_20201012115619957.jpg



では、今回のお尻の重いクランクのバランス率はどうなのか? 

改めて純正ピストン(STD)周りの重量を測り、バランス率 Κ(カッパー)を計算してみると、
IMG_0049_20201011162329a04.jpg
(二気筒360°クランクはシングルと同じと考えるので、2気筒分で計算します)
前の測定で、コンロッド小端部重量の合計は、171.0+174.6=345.6g、
ピストン周りの重量は、355.5×2=671.0gで計算します。


ノーマルクランク(バランスウエイト352g)のバランス率は、
Κ=(352+345.6)/(671.0+345.6)=0.69 (69%)

対する今回のお尻の重いクランク(バランスウエイト403.6g)のバランス率は、
Κ=(403.6+345.6)/(671.0+345.6)=0.74 (74%)

0.05 (5%)大きい計算になります。

この差が実際の走りでどうで違うのか、クランクの組込みが待たれます・・・ね!

因みに、W1の取扱説明書には、
バランスウエイトが0.38㎏で釣り合うよう静バランス取っていると書いてあります。
上記の計算式に当てはめてみると、Κ=(380.0+345.6)/(672.0+345.6)=0.71 (71%)となります。

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クランクのバランス率 再考 (Ⅲ)


各部分の処置が済んで、組立に進みます。
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クランクピンのニードル転動部分に剥離が無いか丹念にチェックします。(ドライブ側)
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裏側もチェック。
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同様タイミング側もチェックします。
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このように、初期のクランクピンには圧入部分にブラスト処理がありません。
後から追加になったのでしょう。


コンロッド大端部内面は、内径をホーニングして適切な径に仕上げます。
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小端部は、ブッシュを入替え内径をホーニング。
新品のピストンピンで1/100㎜の公差で仕上げます。
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ニードルは僅かに太い特注新品に組み替え。
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無事組み上がりました。 点火タイミングをリマーク。
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管理ナンバーをスタンプ。
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肝心のバランスチェック。
どの角度でも止まる重さにバランスウエイトを調整します。
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OH後のバランスウエイトは403.6gでした。
やはり、実績ある平均的なウエイト352gより51.4g重いです。
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クランクのバランス率 再考 (Ⅱ)

バランサーを調べていくと、
両者では、彫の淵の部分の幅が違うことが分りました。

一般的なバランサーを測ってみると、
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幅は9㎜弱。
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今回のバランサーは、




幅は10㎜ちょっとあります。
裏・表とも180°に渡って1㎜厚いですから、お尻が重くなる訳ですね。
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半周だけど、フライホイールの最も大事な部分、慣性モーメントに効いてきます。
「W1の魅力」 を生み出す核心の部分です。(と思ってます)



続いて、コンロッド重量も測ってみると、
ドライブ側が441g。
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タイミング側は453gと、
両者とも平均より重い部類に入ります。
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あとでバランス率の計算で必要になるので、小端部の重量も測りました。
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ドライブ側は171gで全重量に対する小端部の重量比率は0.39
{コンロッドに両サイドのシムとニードルベアリング(96.5g)分も加えると小端部の重量比率は0.32
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タイミング側は174.6g(同0.39)
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組立てて、バランス率を計算してみましょう・・・










クランクのバランス率 再考 (Ⅰ)

先日、「クラッシック サイクル東京」様から 初期W1( W2かも) クランクのOH依頼を頂きました。

届いたクランクをよく観察してみると、いつも扱っているクランクと比べてあちこち違う部分があります。
両端のクランクシャフトの頭部がつるんと丸いですね。



クランクピッチのグループ表示も1~3ではなくてAの刻印。
タイミング側クランクシャフト外周には、通常オイル孔(ベアリングで塞がれる)が空いてますが、このクランクにはありません。
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分解前の芯ブレチェックの値は良好でした。(振れは少なかった )
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バランスをチェックしてみると、
標準バランスウエイトでは足りず、50gほどウエイトを追加してやっと釣り合いました。
すなわち、普段のクランクに比べ、50gお尻が重いクランクということになります。
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クランクを分解してみると、バランサーの彫の形状が違います。初めて見ました・・・
下の標準的なバランサーと比べると彫の角のRが小さく、明らかに鍛造型が違いますね。これがお尻が重い原因でしょうか?
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W1Sまでの標準的なバランサーです。 彫の深さは上とほぼ同一です。
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重量を比べてみると、5.4㎏とむしろ軽めです。 軽いのにお尻は重い・・・
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こちらは5.6㎏。 
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ちなみに、後家さんで残っているバランサーを全部測ってみました。
右側の4個は後期型ですがそれらも含めて、重量はほぼ5.6㎏でした、
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クランクAssyのバランス率はかなり変ってきますね。 
お尻の重い原因はどこから来てるのでしょうか。 両者では重心の位置が異なるということ?
次回は、この原因を調べていきます。

























バランス率

「バランス率」の説明は前にも書きましたので、今回は具体的に計算してみました。
各重量を測ってみると・・・

クランクバランスの測定
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1、バランスウエイト重量:176.0g(1気筒当りとして352.0/2)
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(大体このウエイトでバランスとれますが、足りない時は磁石を付けて微調整します)


2、ピストン・ピン・リング重量(往復重量):346.8g
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3、コンロッドの小端部重量(往復重量):174.6g  (治具重量は除去済)
IMG_0009_2.jpg


以前書いたバランス率の説明図です。
IMG_0029.jpg


式に上記の数値を入れてみると、

バランス率K:(176.0+174.6)/(346.8+174.6)=0.672
今回測定したクランクのバランス率は67%位ですね。

コンロッド重量のバラツキや測定精度も考慮して、これまでの測定結果を整理すると、

W1クランクのバランス率は66~69%くらいの範囲入ります。

バランス率の数値は経験値だと思います。
そのエンジンの使用目的によって異なり、それぞれ一番具合のいいところに設定されていると思います。

今までやってませんが、バランス率を変えてみたらもっと心地よいW1になったりして・・・(汗)














コンロッド小端重量の測定

「クランクのバランス率」のところで宿題になっていたコンロッド小端重量の測定方法ですが、やっと冶具を作ったので、測定の要領を紹介します。

冶具はアルミ製、大端・小端穴にしっくり入るように作るのが大切デス。



このようにセットします。
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他に必要なのは「はかり」と「高さ調整台」、それと後で出てくる「水平器」。
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まず、全重量を測定・・・443gはWのコンロッドの中では重い方です。
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小端側の冶具の重量を風袋引きで0に設定(便利!)
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コンロッドをセットして、大端側で水平を出します。
水平や接地位置をしっかり設定するとはかりの数値は安定します。精度は±0.5g位に入りました。
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170gが小端側の重量ということになります。これを使ってバランス率を計算します。
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別のコンロッドを測ってみましょう。
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小端重量は近いですネ。
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簡易的な測定方法の一つとして参考にしてみて下さい。







クランクのバランス率 Ⅴ

前回の重量の測定結果を整理しますと、
  バランスウエイト重量:352.0g(2気筒分)
  コンロッド小端部重量:355.7g(2気筒分)
  ピストン・リング・ピンの合計重量:334.7g、2気筒分として334.7×2=669.4g
従って、バランス率Κは
   Κ=(バランスウエイト重量+コンロッド小端部重量)/(ピストン他重量+コンロッド小端部重量) 
     =(352.0+355.7)/(669.4+355.7 )×100=69(%)
となります。(2気筒分を一度に計算してしまいました)

バランス率の違いがどれ位から体感できるのかは分かりませんが、この値をおさえて調整して行けば、よりフィーリングのいいバランスが見つかるのかも知れませんね。
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写真はw1の後期型クランクですが、
過去のオートレースのクランクは外周に小さいウエイトがネジ込まれ、バランスを微調整できる構造になってました。
ちょっと信じられませんでしたが、選手は『1gでエンジンが変わる!』と言ってました・・・
究極まで追求するとそうなのかも知れません。

クランクのバランス率 Ⅳ

バランス率を計算する上でコンロッドの小端部重量を測ることが必須になります。
正確に測る方法は後で紹介するとして、ここでは写真のように簡単に測る方法でやってみます。
精度は低いものの、クランクに組まれたままでも測定できます。あくまで簡易的!
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秤(ハカリ)の中央にコンロッド小端部を乗せて、コンロッドが水平になるように秤とクランクの高さを調整します。
大端にも・・・じゃなくて大胆にも、2気筒を同時に測りました。(汗)
左右小端部の重量は合計で355.7gということになります。
(左右の重量は多少違っています)
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ピストン・リング・ピンの合計重量は片側で334,7g、左右多少のばらつきがありますがほぼ同一です。
ここでは純正のSTDピストン。(OVサイズは少し重い)
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バランスウエイトは前に測ってあって左右合計で352g、これで計算できますネ!

クランクのバランス率 Ⅲ

バランス率(Κ)の実際の計算はどうするかといいますと、
簡単な絵を書いてみました。

厄介なのがコンロッドの存在です。
コンロッドは、大端部は回転運動を、小端部は往復運動をしているからです。
便宜的に、小端部重量を往復重量、大端部重量を回転重量とし、その合計がコンロッドの重量とします。

往復重量は、ピストン、ピン、リングのほかにコンロッド小端部重量の合計となり、
回転部アンバランス重量は、w(バランスウエイト)とコンロッド小端部重量の合計になっている訳です。
逕サ蜒・002_convert_20111122232311



クランクのバランス率 Ⅱ

クランク下部(ピンの反対側)を重くしているのは、振動を減らすためです。 
エンジンの振動は主にピストンの往復運動によって生じますが、それを回転振動で一部打ち消すことで全体の振動を減らす訳です。
当然ながら、重さを変えると振動の様子も変わってきます。
ではいったいどれくらい重くすればいいのかということになりますが、その目安を表すのがバランス率です。  
バランス率(Κ)は、 
     
    Κ=回転部分のアンバランス重量/往復部分の重量 ×100 (%)

で計算されます。その値は、エンジンによって50~80%と幅があります。
往復重量(ピストン、リング、ピン、コンロッド小端部の重量の合計)の50~80%分を重くしていることになりますね。
これは経験的に到達した値だと思いますが、走行フィーリングなどエンジンの使用目的に合った最もいいところで決められるので幅があるのでしょう。
単気筒やw1のような2気筒360度クランクの場合、振動をなくするのは困難ですから、うまく折合いをつけている訳です。
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クランクのバランス率 Ⅰ

クランクの「バランス率」を説明しようと思いますが、わかり易く説明できるでしょうか?
ちょっと厄介なのでゆっくり説明します。

写真はw1クランクのバランスチェックをしている様子です。
コンロッド小端部に「バランスウエイト」を付けて、回転方向のどの位置でも止まるウエイトの重さを割り出しています。
実はこれは、クランクピンの反対側の重い部分(カウンターウエイト)の重さを測っている訳です。
回転部分のアンバランス重量を静的に測っていることになります。
クランクは、振動低減のためにあえて回転バランスを崩して下側を重くしています。
ですから、クランクはピンの反対側が重いのです。
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当社「U-CRANK」はカワサキバイクW1エンジンのOH(オーバーホール)を行います。

従来困難とされてきたクランクシャフトも全分解して特製ニードルに交換します。
精度の高い組立てはエンジンの振動を減少し快適な走行を実現します。

W1は製造されてから既に40年以上経過しています。
分解するとオイル通路に堆積したスラッジによりダメージを受けているクランクが少なくありません。
故障する前に是非早期のOHをお勧めします。

お気軽にご相談ください。

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